Yamaguchi Navigator[やまぐちナビゲーター]

山口市にゆかりのある方々のイチオシを紹介する「Yamaguchi Navigator」。アート的視点を交えながら、お気に入りのスポットや行きつけのお店など、地域の隠れた魅力を思い入れたっぷりに語ります。これを見れば、お決まりの観光とは一味違った旅の楽しみ方ができること間違いなし!ぜひ山口市を訪れるときの参考にしてみてください。

宮崎 浩 宮崎 浩さん(建築家)

山口市の景観とマッチした
魅力的な建築物をめぐる旅

画像:ナビゲーター近影
宮崎 浩(みやざき・ひろし)

初めて山口県を訪れたのは大学生のとき、秋吉台〜萩〜津和野という一般的な観光コースをまわりました。特に印象的だったのが秋吉台のカルスト台地です。滅多に見られない奇異なランドスケープに大きな驚きを覚えました。

仕事で山口市に関わるようになったのは、山口が生んだ詩人・中原中也を記念する文学館「中原中也記念館」の設計業務がきっかけです。それ以来、道の駅「仁保の郷」など公共の建物や民間の建物の設計、また、まちづくりなど、幅広い分野に携わっています。

山口市には、国宝瑠璃光寺五重塔や常栄寺雪舟庭をはじめとする歴史的建物がたくさんありますが、今回は敢えて近年の建築物の中から3つご紹介したいと思います。

まずご紹介したいのが、世界的に著名な建築家・磯崎新氏の設計による山口情報芸術センター[YCAM]です。ここは、ギャラリーや劇場、図書館などが一体となった総合文化施設です。ゆるやかな波のような屋根がとてもチャーミングで、高い天井とトップライトからの光で開放的な空間を作り出しています。また、アーティスト・イン・レジデンス(滞在型創作活動)の拠点としても、全国から大きな注目を集めています。

次は、手前味噌になりますが、中原中也の生家跡地に建てられた「中原中也記念館」です。湯田温泉という歓楽街の中に、中也存命の時代から存在するカイヅカイブキの大木が、訪れる人をやさしく迎え入れてくれます。中也の短い人生や独特の詩の世界を、ゆっくり、そしてじっくり味わえる、静かなオアシスのような一角になったと思います。開館からおよそ30年が経過し、とてもいい感じにエイジングされています。

最後も、私が設計に携わった新山口駅北口駅前広場「0番線」です。こちらは、2022年都市景観大賞の優秀賞を受賞しています。見どころは、フランス人植物学者のパトリック・ブラン氏が、山口の植物を用いて、地域の人々と協力して植え込みを行った南北自由通路の壁面を埋め尽くす垂直庭園です。また広場には、山口にゆかりのある種田山頭火の俳句や中原中也の詩の断片を散りばめ、駅というドラマのある空間に一味添えています。

山口市には新旧さまざまな建築物がたくさんあります。“魅力的な建築物に出合うこと”を目的に旅をすれば、いつもとはちょっと違う刺激的な思い出になるのではないでしょうか。

関連施設

山口情報芸術センター[YCAM]

画像:施設外観

中原中也記念館

画像:施設外観

新山口駅北口駅前広場「0番線」

画像:施設外観

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