Yamaguchi Navigator[やまぐちナビゲーター]

山口市にゆかりのある方々のイチオシを紹介する「Yamaguchi Navigator」。アート的視点を交えながら、お気に入りのスポットや行きつけのお店など、地域の隠れた魅力を思い入れたっぷりに語ります。これを見れば、お決まりの観光とは一味違った旅の楽しみ方ができること間違いなし!ぜひ山口市を訪れるときの参考にしてみてください。

舛井 岳ニ 舛井 岳ニさん(陶芸家)

歴史文化が色濃く残る
まち並みをぶらり散策

画像:ナビゲーター近影
舛井 岳ニ(ますい・がくじ)

生まれも育ちも山口市です。20代後半、萩焼の作陶体験をきっかけに陶芸の世界に足を踏み入れました。そこから約12年間、萩市にある萩焼の窯元で修行を積んだ後、2021年に山口市にある古刹、洞春寺の敷地内に工房兼ギャラリーを構えました。現在は、萩焼のカテゴリーにとらわれることなく、様々な土や釉薬、道具、成形方法を試しながら、器を中心に作陶に打ち込んでいます。

私が工房を構える洞春寺は、毛利元就の菩提寺として創建されました。奇兵隊の屯所や毛利敬親の仮寓所など、明治維新の歴史舞台にもなった場所で、山門と観音堂は重要文化財に指定されています。参拝客を迎えてくれるのは、紀州犬の女の子で3歳の「2代目マル住職」ちゃん。人懐っこくてとっても可愛い住職です。そのほか烏骨鶏やヤギ、馬も飼われています。定期的に座禅会やライブイベント、ワークショップなども開催されているので、ぜひチェックしてみてください。

山口市の魅力の一つは、時代を経て変化しながらも、今も歴史情緒あるまち並みが残されていることではないでしょうか。その中から私が特に気に入っている場所をいくつかご紹介します。

まずご紹介したいのは、まちの中央を流れる一の坂川です。室町時代に大内弘世が京の都を模して山口のまちづくりを行った際に、京の鴨川に見立ててつくられた川です。春はおよそ200本のソメイヨシノが咲き誇り、初夏にはホタルが飛び交う幻想的な光景が楽しめるなど、観光スポットとしても大変人気です。春夏秋冬、朝昼晩、いつ切り取っても自然の美しさを満喫できるので、よく散歩をして気分転換をしています。川に架かる橋に腰掛けて、川のせせらぎを聞きながら、国宝・瑠璃光寺五重塔を眺めるのもおすすめです。

一の坂川の東側には、八坂神社や龍福寺がある竪小路、野田神社まで続く伊勢大路があります。都に憧れを抱いた大内弘世が、縦横の街路をつくり、「大路」「小路」と京風にしたその名残が、まちの随所に残っています。
 西側には、「日本の道100選」に選ばれたパークロードがあります。道路沿いには、文化・芸術発信の中心的存在である山口県立美術館、山口の自然や歴史など幅広いジャンルの展示物を備えた山口県立博物館、山口市内を一望できる亀山公園があります。亀山公園の裏手にあるサビエル記念聖堂は、フランシスコ・サビエルの来山400年を記念して建てられました。内部には、サビエルの一生を描いた美しいステンドグラスが飾られています。

次にご紹介するのが山口城跡です。山口城は、幕末に萩城(山口県萩市)に代わる新たな居城として、萩藩主・毛利敬親によって建設されました。大きさは現在の山口県庁とほぼ同じで、大砲による砲撃戦を想定した天守のない西洋式城郭だったと考えられています。廃城令によって姿を消しましたが、跡地には旧山口県庁舎および旧県会議事堂が建てられ、政治の拠点として活用されました。大正時代に建てられた両棟は、日本や西洋の手法を取り入れた独創的なデザインが特徴となっています。現在は、山口県庁舎が建っていますが、幕末から激動の歴史を見守り続けた存在感たっぷりの藩庁門、土塀、石垣、土塁、砲台跡などを見ることができます。

最後に、山口市中心部から少し離れた大内氏遺跡附凌雲寺跡をご紹介します。ここは、大内義興の菩提寺であった凌雲寺の遺跡で、高さ3m、厚さ2mの大規模な石垣が残されており、足を踏み入れた瞬間、その迫力に圧倒されます。当時の寺としては大規模な敷地面積を有しており、有事の際は城郭としての役割もあったのではないかと言われています。山と山の間に位置しているため、心地よい風が駆け抜け、沖縄のグスクや天空の城ラピュタを想像させるようななんとも不思議な場所です。

山口市を観光されるのであれば、まち歩きをおすすめします。散策することで、数多く残る歴史遺産や華やかな大内文化の面影、そして現在の日々の営みを同時に感じていただけるのではないかと思います。

関連施設

一の坂川

  • 山口市後河原
画像:施設外観

山口城跡

  • 山口市滝町1
画像:施設外観

大内氏遺跡附凌雲寺跡

  • 山口市吉敷中尾
画像:施設外観

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