和田 秀作さん(郷土史家)
歴史好き必見!
大内氏ゆかりの地をめぐる旅
山口市は、室町時代に西国一の大名と呼ばれた大内氏によって築かれたまちです。栄華を誇った大内文化の面影は、今も歴史情緒あふれる街並みに残されています。
大内氏の別邸などの跡地(現在の築山跡史跡公園)の一角に住んでいたこともあるのですが、大学で歴史を学ぶまでは、大内氏への興味・関心はまったくありませんでした。卒業後、山口県史編さん室や山口県文書館などの歴史に関連した仕事に携わるうちに、大内氏について学ぶことが私のライフワークになっていきました。現在は、主に『戦国遺文 大内氏編』という大内氏の史料集を作ることに力を注いでいます。
県庁所在地の人口を比較すると、山口市は下から数えて3番目という小さなまちではあるものの、豊かな自然と食材に恵まれており、都市機能がコンパクトにまとまっているので、利便性が高くとても暮らしやすいです。昔ながらの人情を感じる近所付き合いも適度に残されていて、気負わずに自然体でいられるところも魅力だと思います。また、大内氏ゆかりの歴史文化資源が数多く残されているのも、歴史好きにとってはたまらないところです。今回は、歴史好きの方に向けて、私がおすすめするスポットを3つご紹介したいと思います。
一つ目は、山口の総鎮守である今八幡宮(いまはちまんぐう)です。現在の社殿(重要文化財)は16世紀初めに大内義興(おおうち・よしおき)が建立したと伝わっています。山口盆地以外ではあまり例のない、楼門と拝殿が一体化して本殿と連結した、「楼拝殿造(ろうはいでんづくり)」という形式のかっこいいお宮です。大内氏はもちろん、室町幕府の将軍家となった足利氏ともゆかりがあり、かつては初代将軍・足利尊氏(あしかが・たかうじ)奉納の旗を持っていました。また、大内氏を頼って亡命してきた10代将軍・足利義稙(あしかが・よしたね)が、山口で暮らした8年間、家臣に毎日代参させて祈った結果、史上唯一の将軍復帰を果たしました。
二つ目は、興隆寺(こうりゅうじ)です。ここは大内氏の精神的な支柱であった氏寺です。現在は、残念ながら妙見社と仏殿ぐらいしか残っていません。しかし、鐘楼に吊るしてある大内義隆(おおうち・よしたか)寄進の鐘は、重要文化財に指定されているにもかかわらず、誰でも自由に突くことができます。時間に余裕のある人は、法界門跡にある「妙見社」と書かれた石灯籠や整備された山王社跡地などを目安にして、かつての広大な境内を歩いて、往時に思いを馳せてはいかがでしょうか。さらに大内氏の精神世界によりディープに浸りたい人は、聖地であった上宮跡へ登ってみるのもおすすめです。
最後にご紹介するのは、日本最初の文書館として知られる山口県文書館です。山口県の歴史に関する公文書・古文書・記録約53万点を所蔵しています。江戸時代の萩藩毛利家の関係文書が質量ともに揃っていることで著名ですが、大内氏の氏寺である興隆寺の伝来文書をはじめ、武家文書の中には大内氏の関係文書が少なからず含まれています。宝の山である書庫は、普段は非公開ですが、毎年6月初めのアーカイブズウィークの期間中は、バックヤードツアーで立ち入ることができるので、歴史好きの方はぜひ参加してみてください!
このほかにも、山口市には歴史や文化、自然に触れられるスポットがたくさんあります。ぜひ滞在して、時間の許す限りゆっくりとお過ごしください。ただし、都会に比べて交通の便が限られるので、時間に余裕を持っての行動をおすすめします。
関連施設
山口県文書館
- 山口市後河原150-1
- TEL:083-924-2116
開館日時:火曜日〜日曜日9:00〜17:00(祝日・月末整理日・資料点検期間は休館)
※設備工事のため令和7年3月31日まで休館
https://archives.pref.yamaguchi.lg.jp